「おこがましい」の意味と使い方とは?言い換え表現・注意点を解説

「おこがましい」は、ビジネスシーンや目上の人とのやり取りに使われる言葉で、円滑なコミュニケーションを図るための重要な表現です。使い方を間違えると相手に失礼な印象を与えてしまうこともあるため注意が必要です。この記事では「おこがましい」の意味や使用する際の注意点、言い換え表現などを解説いたします。

「おこがましい」の意味

「おこがましい」には、2つの意味があります。
ビジネスシーンでは、目上の人に指摘する場面や、クッション言葉として「身の程をわきまえない」という意味として使われます。

1: 身の程をわきまえない。差し出がましい。なまいきだ。
2: いかにもばかばかしい。ばかげている。

おこがましいは古くから使われている大和言葉のひとつで、「ばかげている / 愚か」という意味の「をこ」と、接尾語の「がまし」がついた「をこがまし」という表記で、源氏物語にも登場しています。

「おこがましい」の使い方・例文

自分の意見や要望を効果的に伝えるために「おこがましい」を適切に使用することで、円滑なコミュニケーションを図ることができます。 活用シーン別に、使い方と例文を見ていきましょう。

● 目上の人に指摘する場合

「おこがましいですが」と一度断りを入れることで、相手の立場を尊重し敬意を示しながら、意見や指摘を伝えることができます。ストレートに伝えるよりも、相手に不快な印象も与えづらくなります。

〈 例文 〉

 ▢ 私がいうのもおこがましいですが、この見積書の◯◯の部分は誤りではないかと思います。
 ▢ おこがましいとは存じますが、この企画は再検討の余地があるのではないでしょうか。

● クッション言葉として使う場合

目上の人に依頼や提案をするときや聞き入れてもらったときに、「おこがましい」をクッション言葉として使用することで、相手に負担をかけることへの配慮や謙虚な姿勢を示すことができます。

〈 例文 〉

 ▢ 誠におこがましい提案かもしれませんが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
 ▢ おこがましいお願いを聞いてくださり、誠にありがとうございます。

● 目下の人に注意する場合

「おこがましい」は、部下や後輩に注意する際にも使用できます。しかし具体的な行動を指す言葉ではないため、改善点が明確な場合は具体的な内容も示すことで、本来の意図が伝わりやすくなるでしょう。

〈 例文 〉

 ▢ お客さまに対しておこがましい言動は控えるよう、気をつけてください。
 ▢ この件については、上司に相談せずに自己判断で行動したのは、おこがましいと思うよ。

「おこがましい」を使う際の注意点

「おこがましい」の使用は、適切に使えば相手への敬意を示し円滑なコミュニケーションを図れますが、使い方を誤ると相手に失礼な印象を与えてしまうこともあるため注意が必要です。

「おこがましい」は、自分をへりくだっていうときに使う言葉ですが、相手よりも自分が立場や年齢が上で、経験が豊富なことが明らかな場合に使うと、嫌味や皮肉として受け取られる可能性があります。常に相手の立場に立って考え、適切な言葉遣いを心がけることが重要です。また、過剰に使用すると誠実さが失われ、かえって印象が悪くなる可能性もあります。相手や状況を十分に考慮しながら使うことも重要です。状況によっては「恐れ入りますが」や「申し訳ございませんが」など、他の謙遜表現と適切に組み合わせることで、より自然で穏やかに自分の意見や要望を効果的に伝えることができます。

さらに「おこがましいですが」と前置きをいわれた場合は、「はい」「そうですね」と肯定するようなあいづちを打たないように注意しましょう。「そうですね」「はい」と答えてしまうと、相手に不快な思いをさせてしまうかもしれません。相手の意図を理解し、「いえいえ」「そんなことはございません」など、やさしく控え目に否定を示すあいづちを打ちましょう。適切な返答を心がけて、相手を気遣う言葉を投げかけるようにしましょう。

「おこがましい」の言い換え表現

「おこがましい」を言い換える場合、「差し出がましい」や「厚かましい」などの表現が使えます。それぞれ言葉の持つニュアンスは異なります。言葉の前後や状況に合わせて使い分けるのがよいでしょう。言い換え表現を知っていると表現が豊かになり、より細かなニュアンスの違いを伝えることができます。

● 差し出がましい

「差し出がましい」は「必要以上に他人のことに関与しようとする。出過ぎた感じである。」という意味がある言葉で、お節介や余計なお世話と近いニュアンスで、出しゃばった行為のことを指します。「差し出がましい」を使った例文は、以下のとおりです。

〈 例文 〉

 ▢ 差し出がましいお願いですが、資料の共有をお願いできますでしょうか。
 ▢ 差し出がましい申し出で恐縮ですが、プロジェクトへの協力をご検討いただけませんか?
 ▢ 差し出がましいですが、この企画、少し改善点があるかもしれません。

● 厚かましい

「厚かましい」には「行動や態度に慎みがない。ずうずうしく遠慮がない。」という意味がある言葉です。基本的にネガティブな意味合いで用いられますが、ビジネスシーンでは自分の行動が相手に負担をかける可能性を意識しながら、へりくだって依頼をするニュアンスがあります。「厚かましい」を使った例文は、以下のとおりです。

〈 例文 〉

 ▢ 厚かましいお願いですが、お時間を頂戴できますでしょうか。
 ▢ 厚かましいで大変恐縮ですが、この商品、ぜひお試しください。
 ▢ 厚かましいお願いではありますが、お客さまの貴重なご意見をお聞かせください。

● 分不相応(ぶんふそうおう)

「分不相応」には「その人の身分や能力にふさわしくないこと。また、そのさま。」という意味がある言葉です。具体的に行動や状況の不適切さを指す表現ですので、使い方を注意しないと相手を不快な気分にさせてしまう恐れがあります。ビジネスシーンでは主に謙遜表現として使います。「分不相応」を使った例文は、以下のとおりです。

〈 例文 〉

 ▢ 分不相応なことを申し上げてしまい、失礼いたしました。
 ▢ 分不相応のお願いで大変恐縮ですが、このプロジェクトに参加させていただけないでしょうか。
 ▢ 分不相応ではございますが、この機会に経験を積ませていただきたいと考えております。

● 僭越(せんえつ)

「僭越」は、「自分の地位や立場を越えて出過ぎたことをすること。また、そのさま。」という意味がある言葉で、「おこがましい」より格式高い表現です。自分より立場が上の人がいるにもかかわらず自分の意見を言う際の前置きとして使用します。「僭越」を使った例文は、以下のとおりです。

〈 例文 〉

 ▢ 僭越ですが、私の意見をお伝えしてもよろしいでしょうか。
 ▢ 僭越ながら、○○が不在のため、わたしが対応させていただきます。
 ▢ 誠に僭越ではございますが、今回の件に関しましてはお断りさせていただきます。




「おこがましい」の意味や使用する際の注意点、言い換え表現などを解説しました。ビジネスシーンでは、自分がへりくだって相手を立てるというシチュエーションが多くあります。相手の立場や感情を考慮し、状況に応じた適切な表現を選択することで、さまざまな人と円滑にコミュニケーションを図れるようにしましょう。



Top