
「齟齬」という言葉は「齟齬がある」「齟齬が生じる」という言い方で、ビジネスシーンで見聞きする機会がありますが、文脈から「相違」という言葉と同じような意味と理解して使ってしまうと、相手に不快感を与えてしまう恐れがあるため注意が必要です。この記事では「齟齬」の意味や「相違」との違い、使用する際の注意点や言い換え表現などを解説いたします。
「齟齬」の意味とは
齟齬は、「そご」と読みます。齟齬の「齟」は、くいちがう・かみあわない、齟齬の「齬」は、くいちがうという意味がある漢字で、物事がうまく噛み合わないこと、食い違いなどを意味する言葉です。
意見や理解、解釈など、お互いの意志がうまく通じず食い違い、ものごとがうまく進まない状態をあらわす言葉で「齟齬がある」「齟齬が生じる」「齟齬をきたす」などの表現で使われます。
「齟齬」と「相違」の違い
「齟齬」と混同しやすい言葉に「相違(そうい)」がありますが、その意味合いは異なります。
「齟齬」は意見や解釈など、お互いの意志がうまく通じず、ズレや食い違いの状態を指します。
「相違」は2つのものの間に、明確な違いがあり、明らかに一致しない状態を指します。
「齟齬がある」という場合は、意見や理解、解釈など、お互いの意志にズレや食い違いが生じていることを指し、「相違がある」という場合は、お互いの意見が明らかに異なり、一致しない状況にあることを指します。「齟齬」と「相違」は似ているような言葉ですが、使用する状況が異なるため混同しないよう注意しましょう。
「齟齬」の使い方と例文
お互いの意見や理解、解釈など認識がずれているときに、「齟齬がある」「齟齬が生じる」「齟齬をきたす」などの表現で使われます。ビジネスシーンなどでの使い方を、例文でご紹介します。
〈 例文 〉
▢ 担当者の間の認識に、齟齬があるようです。
▢ 齟齬があるといけないので、お互いの意見をじっくり確認しました。
▢ 認識に齟齬がないかのご確認をお願いいたします。
▢ プロジェクトの進め方について、メンバー間に齟齬が生じています。
▢ ご説明いただいていた話と齟齬が生じているようです。
▢ 齟齬が生じないように、再度確認いたします。
▢ 初期段階のコンセプトと齟齬をきたしている。
▢ 解釈の違いが双方の見解に齟齬をきたしてしまった。
▢ 齟齬をきたさないよう、情報伝達の徹底と明確な指示を心掛けましょう。
「齟齬」を使用する際の注意点
「齟齬」をビジネスシーンで使う際の注意点を紹介します。
相手に不快な印象を与えないために、以下の点に注意して使用しましょう。
● 目上の方への使用は避ける
「齟齬」は、意見や理解、解釈など、お互いの意志にズレや食い違いが生じていることを指し、少なからず相手にも意見や理解、解釈などのズレがあることを指摘するニュアンスが含まれています。責任を追求されている印象を与えてしまったり、批判的に受け止められてしまう可能性があります。「齟齬」は、取引先や上司などの目上の方には使わないようにしましょう。
● 自分に非があるときは使用しない
お互いの認識の違いがあり、その原因や責任が自分にあるときは、「齟齬」という表現は使わないようにしましょう。「齟齬」は、相手にも意見や理解、解釈などのズレがあることを指摘するニュアンスが含まれています。自分の認識の違いによるミスが原因で、食い違いや行き違いが生じている場合に「齟齬」を使用してしまうと、相手にも非があると責任を押し付けている印象を与えてしまいます。自分に非があるときは「齟齬」を使わずに、素直に非を認めて心から謝罪しましょう。
「齟齬」の言い換え表現
「齟齬」の言い換え表現を、例文とともに紹介します。言い換え表現を知っていると、相手や状況にあわせて使い分けができ、より細かなニュアンスを伝えることができます。
● 言い換え表現 1: 行き違い
「行き違い(いきちがい)」とは、意志がうまく通じないでくい違いを生じることを表す言葉で、「齟齬」の言い換え表現として使える言葉です。「 行き違い」を使った例文は、以下のとおりです。
「行き違い」の例文
納期については、担当者間で行き違いがあり、遅延が発生しました。
会議の議題について、参加者間で行き違いが生じ、議論が白熱しました。
プロジェクトの進捗状況について、報告に大きな行き違いがあり、再確認が必要となりました。
● 言い換え表現 2: 不一致
「不一致」とは、一致しないこと、ぴったり合わないことを意味する言葉で、「齟齬」の代わりに使用できる表現です。「 不一致」を使った例文は、以下のとおりです。
「不一致」の例文
意見に不一致はあったものの、議論を重ねることでより良い解決策を見出すことができた。
初の計画と異なる部分もあったが、柔軟な対応により、不一致を解消し、プロジェクトを成功させることができた。
クライアントとの意見に不一致はあったものの、双方納得のいく形に修正することで、良好な関係を築くことができた。
● 言い換え表現 3: 軋轢
「軋轢(あつれき)」とは、仲が悪くなることを意味する言葉で、人間関係の悪化やいざこざ、摩擦が起きることなどをあらわす言葉です。「齟齬」の代わりに使用できる表現です。「 軋轢」を使った例文は、以下のとおりです。
「軋轢」の例文
説明不足から、チーム内での意見対立が原因で、軋轢が生じている。
意見交換の中で軋轢が生じたとしても、建設的な議論を通じて、より良い方向へ進むことができた。
過去の軋轢を乗り越え、互いに尊重し合うことで、より良い関係性を築き、組織全体の成長に貢献していきたい。
「齟齬」の意味や「相違」との違い、使用する際の注意点や言い換え表現などを詳しく解説しました。「齟齬」はネガティブなニュアンスがあるため、意味と使い方をしっかり理解することが重要です。ビジネスシーンで使用する際は、使う相手やシーンに応じて適切な言葉選びを心がけ、信頼されるコミュニケーションを目指しましょう。認識のずれや食い違いを防ぎ、齟齬がない円滑なコミュニケーションを図りましょう。