お客さまや取引先に対して「待っています」ということを、より丁寧に伝えたいときに「お待ちしております」というフレーズを使うことがあります。打ち合わせやイベントがおこなわれるとき、メールや電話にて頻繁に使う表現でもあり、使う場面が多いからこそ正しく使えるよう、意味や使い方、例文や言い換え表現、注意点について解説いたします。
「お待ちしております」の意味
「お待ちしております」は「待っています」を丁寧に表現した言葉です。接頭語の「お」をつけたり、「おります」という謙譲表現にすることで、相手に対する敬意を示す言葉です。
「待つ」の言葉には、 物事・人・時が来るのを予期し、願い望みながら、それまでの時間を過ごすという意味があります。「お待ちしております」には、待っているだけでなく「望んでいる」「期待している」という意味も含まれます。
「ご来店をお待ちしております」や「ご連絡をお待ちしております」など、話し言葉としても書き言葉としても、お客さまや取引先に対してさまざまなシーンで使用可能です。
「お待ちしております」の使い方と例文
さまざまなビジネスシーンで活用できる「お待ちしております」の、使い方と例文を紹介します。
注意点なども併せて確認いただき、状況や相手に応じて言葉を使い分けましょう。
1: ご連絡(ご返信/ご返答)をお待ちしております
「ご連絡をお待ちしております」は、何か聞きたいことがある場合や確認してもらいたいとき、相手からの返信・返答が必要な場面で使うことが多いです。「ご連絡ください」よりも「お待ちしております」の方がやわらかい印象になります。なお、連絡や返事の期日を設けている場合は、その旨を伝えるようにしましょう。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ 会議の日程調整につきまして、ご連絡をお待ちしております。
▢ プロジェクトの進捗状況について、ご連絡をお待ちしております。
▢ 製品の配送スケジュール、ご連絡をお待ちしております。
2: お待ちしておりますので~
「お待ちしております」と言い切ると、少し厳しい印象で気になるという場合は、「お待ちしておりますので~」を使うと柔らかく伝えられます。状況や相手との関係性で使い分けるとよいでしょう。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ ご連絡をお待ちしておりますので、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
▢ 折り返しのご連絡をお待ちしておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
▢ ご来場をお待ちしておりますので、ぜひお時間をお作りいただけますと幸いです。
3: お待ち申し上げております
目上の人に対して、より丁寧な表現で伝えたいときは「お待ち申し上げております」を使います。謙譲語が2つ続く二重敬語ともいわれていますが、社会に浸透している言葉でビジネスシーンでも使うことが可能です。敬意の強い表現で堅苦しい印象を与えるため、どちらかというと口頭よりも文書やメールを中心に使用されています。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ ご連絡をお待ち申し上げております。
▢ 社員一同、皆さまのご来場を心よりお待ち申し上げております。
▢ 〇〇様のご来訪をお待ち申し上げております。お会いできることを楽しみにしております。
「お待ちいたしております」「お待ちしてます」は誤った言葉?
「お待ちいたしております」と「お待ちしてます」について、注意点を紹介します。
● お待ちいたしております
より丁寧に伝えようと「お待ちいたしております」としてしまうのは二重敬語となります。「する」の謙譲語「いたす」と、「いる」の謙譲語「おります」は両方とも謙譲語です。同じ敬語表現を重ねて使う「お待ちいたしております」は使わないようにしましょう。
● お待ちしてます
本来入るべき「い」が省かれた表現を、「い」抜き表現といいます。くだけた印象になるため、ビジネスシーンで使うのは避けましょう。意味は伝わりますが、幼い印象を与えてしまうので、「お待ちしています」と丁寧な表現で伝えるようにしましょう。
「お待ちしております」の言い換え表現
「お待ちしております」を言い換える場合、「お越しください」や「よろしくお願いいたします」の表現が使えます。それぞれ言葉の持つニュアンスは異なります。言葉の前後や状況に合わせて使い分けるのがよいでしょう。
お越しください
「お越しになる」は「来る」の尊敬語です。「お越しください」は「来てください」を丁寧に表現した言葉です。相手が自分のところに来るのを待つ場合のみに使用します。同僚や部下、後輩には使わず、お客さまや取引先など、目上の人に丁寧に伝えたい場面で使います。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ 〇月〇日、〇時にお越しください。
▢ 〇月△日に弊社で発表会を行いますので、ぜひお越しください。
▢ お待たせする場合もございますので、お時間に余裕を持ってお越しください。
よろしくお願いいたします
「よろしくお願いいたします」は、相手に依頼をするときに添える敬語表現です。なるべく短く伝えたい場合に使います。相手にとって「お待ちしております」がプレッシャーになりそうなときは「よろしくお願いいたします」を使うといいでしょう。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ ご連絡のほどよろしくお願いいたします。
□ 〇月△日までにお返事をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
□ 〇時までに会議室前によろしくお願いいたします。
「お待ちしております」への返事の仕方
相手から「お待ちしています」と言われたとき、状況に応じて適切な返事をすることが重要です。
「ありがとうございます」や「かしこまりました」、「承知いたしました」などのあらたまった表現や、「わかりました」などを使い分けましょう。「よろしくお願いいたします」でもかまいません。
イベントの案内などの文書に返事をするときはお礼の言葉を伝え、「当日を楽しみにしております」など楽しみにする自分の気持ちも添えるとよいでしょう。
「お待ちしております」の意味や使い方、例文や言い換え表現、注意点について解説しました。「お待ちしております」は、対面の会話のほかにもメールや電話などビジネスシーンで頻繁に使われる表現です。相手や状況に応じて言葉の意味合いを理解し、状況にあった敬語の言い換え表現を使い分けて、円滑なコミュニケーションがとれるように心がけましょう。