「伺う」と「窺う」と「覗う」の違い・正しい使い方をチェック

「うかがう」と同じ読み方をする「伺う」と「窺う」と「覗う」は、それぞれの言葉の意味がは異なります。「伺う」は複数の意味を持ち二重敬語など間違いやすい点があり、相手に誤解を与えないことに注意が必要な言葉でもあります。「伺う」と「窺う」と「覗う」の言葉の意味と違いを解説します。

「伺う」の意味・使い方

「伺う」は「聞く」「尋ねる・問う」「訪れる・訪問する」の謙譲語です。それぞれの「伺う」の使い方を例文から解説します。

1.「聞く」の謙譲語「伺う」の意味・使い方

自分が話を聞くときに、話をする人に向けて使います。

例文 1: お話を伺ってもよろしいでしょうか
例文 2: 御社の〇〇様より伺っております
例文 3: 恐れ入りますが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか

例文2「御社の〇〇様より」というように、取引先やお客さまから聞いていることを同じ会社の方や関係者にお伝えする場合は、謙譲語の「伺っている」というのは正しいです。しかし、間違いやすい例として、自社の課長から聞いているということを、自社以外の取引先やお客さまへ伝える場合は「弊社の課長より伺っております」というのは間違いです。課長にへりくだっていることを、取引先やお客さまへ伝える言い方になってしまっています。この場合は、身内などへりくだる必要がないので「弊社の課長より伺っております」ではなく「弊社の課長より聞いております」と、自社以外の取引先やお客さまへ伝えるのが正解です。

例文3の「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」の間違った別の言い方として「お名前を頂いてよろしいでしょうか」や「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」があります。「頂戴する」「頂く」という言葉は、一般的に「もの」に対して使う言葉です。名刺や資料などは「もの」ですので「名刺を頂いてよろしいでしょうか」や「資料を頂戴してもよろしいでしょうか」といいますが、名前は「もの」ではないため「お名前を頂く」や「お名前を頂戴する」というのは間違いです。「あなたの名前をもらう」という意味になってしまいますので注意しましょう。名前を聞きたい場合は、例文3の「 お名前を伺ってもよろしいでしょうか」や「お名前を教えていただけますでしょうか」が正解です。

2.「尋ねる・問う」の謙譲語「伺う」の意味・使い方

分からないことや知らないことを、人に答えてもらうようにする場合に使います。

例文 1: ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか
例文 2: 伺いたいことがあるのですが、○○を教えていただけますか
例文 3: 提案資料について詳しく伺ってもよろしいでしょうか

謙譲語は、自分の動作をへりくだる敬語表現です。自分以外の人の動作に「伺う」は使いませんが、丁寧に伝えようとして「窓口にて伺ってください」という表現がありますが間違いです。この場合は「窓口にてお尋ねください」が正解です。

3.「訪れる・訪問する」の謙譲語「伺う」の意味・使い方

相手先へ訪問するときや、こちらから先方に向かうことを申し出るときなどに使います。

例文 1: 明日、御社に伺います
例文 2: 営業課の○○様と13時のお約束で伺いました、△△と申します
例文 3: ご都合のよろしいときに、ご挨拶に伺いたく存じます

訪問の約束をするときに使う「お伺いしたいのですが」や「お伺いしてもよろしいでしょうか」などの「お伺い」は二重敬語で間違った使い方です。

丁寧に伝えようとするあまり、敬語に敬語を重ね、二重敬語にしてしまうことがありますが、過剰な表現になり、相手に失礼な印象を与える可能性もあるため注意が必要です。

「お伺いしたいのですが」は「伺いたいと思いますが」または「伺いたく存じますが」が正解です。
「お伺いしてもよろしいでしょうか」は「伺ってもよろしいでしょうか」または、くだけた言い方になるため相手との関係性によりますが「お邪魔してもよろしいでしょうか」が正解です。

「お伺いします / お伺いいたします / お伺いさせていただきます / 伺わせていただきます」も二重敬語です。間違ってはいるものの、より敬意を込めた言葉として使用する人が多く、ビジネスの中でよく使われることもあり、習慣として定着し一般的に使われています。
2007年に文化庁より「敬語の指針」にて、習慣として定着している二重敬語の例に「お伺いする / お伺いいたす / お伺い申し上げる」が発表されました。

● 文化庁|報告・答申・建議等|「敬語の指針(答申)」(平成19年2月2日)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/

しかし、ビジネスマナーに詳しい人や年配の方の中には快く思わず、心証を悪くする可能性がないとは言い切れません。「お伺い」の方が丁寧という考えや、一般的に使われているため使用しても問題ないとされていますが、誤解を招く恐れがある「二重敬語」は、できるだけ使わないように注意しましょう。

「窺う」の意味・使い方

「 伺う(うかがう)」と同じ読み方をする「 窺う(うかがう)」の使い方を、例文から解説します。

「伺う」と同語源で、目上の人の様子を「窺(うかが)いみる」意から、その動作の相手を敬う謙譲語「うかが(伺)う」となったそうですが、現在の使われ方には違いがあります。「伺う」は「聞く / 尋ねる・問う / 訪れる・訪問する」の謙譲語ですが「窺う」は動詞です。

「窺う」の意味は「すきまなどから、ひそかにのぞいて見る」や「ひそかにようすを探り調べる」あるいは「一部分から全体を推し量って知る。それとなくようす、状況を察する」といった意味や「ようすを見て、好機の訪れるのを待ち受ける」や「一応心得ておく」の意味があります。

「窺」は常用外漢字ですので公用文では漢字表記ではなく、平仮名で「うかがう」と表記します。

例文 1: 鍵穴から中をうかがう
例文 2: 顔色をうかがう
例文 3: 意気込みのほどがうかがわれる

「窺う」と「覗う」の違い

「窺う(うかがう)」の意味と似た意味で、同じ読み方をする「覗う(うかがう)」という言葉があります。

窺う: 「そっと(気づかれないように)様子を見る」という意味
覗う: 「何かを通してのぞいて様子を見る」という意味

ほぼ同じ意味で使われていますが「覗う(うかがう)」は実際に使われることが少なく、辞書に掲載されてないこともあります。「うかがう」の予測変換候補は、パソコンは「覗う(うかがう)」と出ますが、スマートフォンでは「覗う(うかがう)」は出ません。

「覗」は「覗き穴(のぞきあな)」のように「のぞく」と読む場合に用いられる傾向があります。
「のぞく」の予測変換候補は、パソコンでもスマートフォンでも「覗く(のぞく)」は出ます。

「覗」は「のぞく」という読み方で使われることの方が多いです。「覗」も常用外漢字ですので公用文では漢字表記ではなく、平仮名で「のぞく」と表記します。

「伺う」と「うかがう(窺う・覗う)」には複数の意味があるので、どのような意味で使っているのかを理解し、正しく使うようにしましょう。

とくに文章を書く時は、言葉の意味など改めてしっかりと理解し、文脈に応じた適切な使い分けが必要です。二重敬語にならないようにすることも意識しなければなりません。間違った敬語表現はビジネスシーンでは失礼にあたる場合もあるので注意しましょう。



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