「できかねます」の意味や使い方とは?言い換え表現・注意点を解説

ビジネスシーンにて、相手の依頼をお受けすることが難しい場合に「できかねます」と返答することがあります。お断りする心苦しさなどから、はっきりと言いにくいこともありますが、角を立てないよう丁寧にしっかり伝えることが大切です。「できかねます」を正しく使えるよう、意味や使い方、例文や言い換え表現、注意点について解説いたします。

「できかねます」の意味

「できかねます」は、可能を表す「できる」と、難しい・困難だという意味の「かねる」という言葉を組み合わせた言葉です。「できかねる」に「ます」を付けた丁寧語で、「○○するのが難しい」「○○しようしてもできない」という意味を持ちます。

「できません」よりも柔らかい印象で、取引先や目上の人に対して不快感を与えにくく、依頼や要求を婉曲に断る際に適した丁寧な断り表現です。メールやビジネスチャットなどで「できかねます」を使う際は、ひらがなで表記するようにしましょう。

さまざまなビジネスシーンで活用できる例文を紹介します。

〈 例文 〉
 ▢ 申し訳ございませんが、その時間には対応できかねます
 ▢ 誠に恐れ入りますが、○○の担当は席を外しているため、すぐのお返事はできかねます。
 ▢ そちらの商品の返品について、受付はできかねます。
 ▢ 保証期間が過ぎているため、無料での製品交換はできかねます。
 ▢ 返金につきましては対応できかねますので、ご了承くださいませ。
 ▢ 社内規定により、個人情報を第三者に開示することはできかねます。
 ▢ こちらのメールは送信専用となります。いただいたメールにはご返信できかねますのでご了承ください。


「できかねます」を使うときの注意点

「できかねます」は、丁寧な断り表現ですが、使用するときに注意したい点もあります。
円滑なコミュニケーションを実現するために「できかねます」を使用するときの注意点について確認していきましょう。

1: クッション言葉を添える

「できかねます」は丁寧な断り表現ですが、人によってはきつい言葉だと感じる可能性もあります。クッション言葉をつけることで、本当はお受けしたいけれど「○○するのが難しい」「○○しようしてもできない」という、残念な気持ちをより伝えることができ、取引先や目上の人に対して不快感を軽減し、今後の関係を崩すことも避けられるでしょう。

場面によって最適なクッション言葉を添えることで、柔らかかく伝えられます。

 ▢ 恐れ入りますが
 ▢ 誠に残念ですが
 ▢ 申し上げにくいのですが / 申し訳ございませんが
 ▢ 不本意ではありますが
 ▢ せっかくお声がけいただいたのですが
 ▢ せっかくの申し出なのですが
 ▢ 大変ありがたいお話ですが

また、「できかねます」と言い切ってしまうと冷たい印象を与えてしまうこともあります。「ご了承いただけますようお願い申し上げます」や「何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます」、「ご要望に沿えず申し訳ありません」や「お力になれず誠に申し訳ございません」などの一言を添えると、さらに丁寧な表現になります。


2: 代わりとなる提案をする

相手の依頼や要求・要望をやむなく断らなければならない場合、ただお断りするだけでなく、断る理由を具体的に説明し、代替案が用意できるのであれば積極的に提示しましょう。今後の対応の可能性がある場合は、それらについて触れることも大切です。

「○○ではいかがでしょうか」、「○○させていただきたいのですがいかがでしょうか」と、無理のない範囲で代替案を提示することで、次のビジネスチャンスを掴むきっかけになるかもしれません。相手に配慮した代わりとなる提案をおこない、今後の仕事につなげましょう、


3: 「できかねます」は敬語ではない

「できかねます」は目上の人にも使える表現ですが、「できかねる」に「ます」を付けた丁寧語です。目上の方には、より丁寧な敬語表現「いたしかねます」という言葉が適している場合があります。「できかねます」の「できる」の部分を「する」の謙譲語である「いたす」に言い換えることで、相手を敬うことができ、より柔らかな印象を与えます。


4: 「できかねません」は間違い

「できかねます」を「できかねません」と、間違った使い方をしないよう注意が必要です。「できかねます」は、可能を表す「できる」と、難しい・困難だという意味の「かねる」という言葉を組み合わせた言葉です。「かねる」には、すでに難しい・困難だという否定のニュアンスがあるため、「できかねません」は二重の否定となってしまいます。

相手に誤解を与える可能性があるため、断る場合には「できかねます」というようにしましょう。


「できかねます」の言い換え表現

「できかねます」の類語や使いやすい言い換え表現を例文とともに紹介します。
言い換え表現を知っていると、表現が豊かになり、より細かなニュアンスの違いを伝えることができます。

いたしかねます

「いたしかねます」は、「できかねます」の敬語表現です。目上の方には、より丁寧な敬語表現「いたしかねます」という言葉が適している場合があります。「できかねます」の言い換え表現の中でもよく使われる表現です。

使い方の例文は、下記のとおりです。

〈 例文 〉
 ▢ 申し訳ございませんが、その時間には対応いたしかねます。
 ▢ ご注文の件ですが、現在在庫がないため、今週中の発送はいたしかねます。


お受けできません

「お受けできません」は、できないということが確実に伝わり、受け取り方の違いによるすれ違いや誤解も生じにくいです。相手に不快感を与えずに単刀直入に伝えるときに適していますが、人によっては否定感が強く、きつく聞こえてしまうこともあるでしょう。より丁寧な印象を与える表現「お受けすることができません」を用いて、角を立てないように状況や相手との関係性で使い分けるとよいでしょう。

使い方の例文は、下記のとおりです。

〈 例文 〉
 ▢ 誠に恐れ入りますが、スケジュールの都合で今回はお受けできません。
 ▢ 大変興味深いお話ではありますが、検討させていただいた結果、提案をお受けすることができません。


お役にたてません / お力になれません

自分のスキル不足や自分の都合などで、依頼や要望に応えられないことを表す言葉です。自分を謙遜している表現のため、相手に不快感を与えずに、ビジネスシーンでも使いやすい表現です。似た表現としては、「お力になれません」もあります。

使い方の例文は、下記のとおりです。

〈 例文 〉
 ▢ 大変恐縮ですが、都合があわないため、お役にたてません。
 ▢ 大変ありがたいお話ですがスキル不足のため、わたしではお役にたてません。


お断りせざるを得ません

「断りたくはないけれど、やむを得ずお断りする」「残念ながらお断りするほかございません」という意味です。
使用する際は、「残念ですが」などクッション言葉を添えるなどで、ソフトな印象にすることを意識しましょう。

使い方の例文は、下記のとおりです。

〈 例文 〉
 ▢ 誠に残念ではございますが、今回のお話はお断りせざるを得ません。
 ▢ 誠に心苦しいのですが、その日はすでに別の予定が入っており、お断りせざるを得ません。





「できかねます」は丁寧な表現ではありますが、できないことを表現する言葉に過ぎません。曖昧に使ってしまうと、できると思わぬ誤解される恐れがあるため、敬語の使い方や状況に応じた言い回しが重要になります。相手に不快感を与えないように「できません」と伝えるためには、断る理由を明確にし、丁寧な言葉遣いを心がけて次の機会へと繋げられるようにしましょう。



Top