ビジネスメールで仕事の用件のほかに相手の体調を気遣うケースがあります。ビジネスのコミュニケーションにおいて、相手の体調を気遣うことは、信頼関係を築く上で重要です。具体的にどのような内容を記載すればよいのでしょうか。相手の体調を気遣うメールの言葉の選び方・注意点について解説いたします。
体調を気遣うメールを送るシチュエーション
ビジネスにおいて相手の体調を気遣うメールが必要な場面は、大きく分けて2つがあります。
● 仕事で関わりのある相手が、体調を崩した場合
● 季節の変わり目などに、気遣いとして送る場合
仕事関係の相手が体調を崩したことを知ったとき、体調不良による欠勤・欠席の連絡を受けたとき、一定期間の病気療養が必要な場合や、季節の変わり目や感染症の流行時に相手を気遣う場合などに、体調を気遣うメールを送るケースがあります。状況に合わせた相手を思う気遣いの言葉をメールで送ることは、信頼関係の構築や良好なビジネス関係の維持にもつながります。
相手の体調を気遣う言葉
体調を気遣うメールで使う言葉は、さまざまなものがあります。それぞれの意味と使い方を紹介します。
状況や相手に応じて言葉を使い分けましょう。
1: ご自愛ください
「ご自愛ください」は、「体調を崩さないように気をつけてください」や「ご自身のお体を大切にしてください」という、相手の健康を気遣う意味が込められた言葉です。相手の体調に対する気遣いを表す言葉として、取引先や上司など、目上の人に対しても、問題なく使える表現のひとつです。
注意点としては、「体調を崩さないように気をつけてください」という意味から、すでに体調の悪い人に対して使うのは不適切とされています。また「ご自愛」という言葉に「ご自身のお体を大切にしてください」という意味が含まれていることから「お体を、ご自愛ください」、「体調に気をつけて、ご自愛ください」という表現にしてしまうと、同じ意味を重ねている二重表現となり好ましくありません。
「ご自愛ください」は、ビジネスシーンで使いやすい表現のひとつですが、使う状況や相手に注意が必要です。「ご自愛ください」のみで正しい表現ですが、目上の人に対しては「どうぞ」や「くれぐれも」、「何卒」などの言葉を添えると、より丁寧さが伝わります。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ 厳しい寒さが続いておりますので、くれぐれもご自愛ください
▢ 本年も健康で素敵な日々が続きますよう、どうぞご自愛ください
▢ 風邪など召されませぬよう何卒ご自愛ください
2: お体に気を付けてお過ごしください
「お体に気を付けてお過ごしください」も、相手の健康を気遣う表現として目上や目下にかかわらず幅広く使える言葉です。
より丁寧な表現にする場合は「気を付けて」の前にも「お」を付けて、「お体にお気を付けてお過ごしください」としたり、「どうぞ」「くれぐれも」などの言葉を付け加えて「どうぞ、お体にお気を付けてお過ごしください」とするといいでしょう。
すでに相手が体調を崩している場合に「体に気を付けて」という意味の言葉を使うと、失礼にあたりますので注意しましょう。また「お体」と「お身体」、どちらを使うか悩む方もいらっしゃいますが、「体」は頭から足全体の肉体を表す意味があり、「身体」には心も含む人の体の意味があります。どちらを使っても間違いではありませんが、法律や報道など公的な文書では「体」が使われます。基本的には「体」の方を使うことが多いようです。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ 季節の変わり目でございますので、どうぞお体にはお気をつけてお過ごしください
▢ ご無理をなさいませんよう、お体に気をつけてください
▢ ご多用とは存じますが、くれぐれもお体に気を付けてお過ごしください
3: お大事になさってください
「お大事になさってください」は、病気や怪我をしてしまった相手に対して使う気遣いの言葉です。
目上の人には「お大事に」や「お大事にしてください」という表現は使わずに「お大事になさってください」を使います。また「どうぞ」や「くれぐれも」などの言葉を添えると、より丁寧さが伝わります。「お大事になさってください」は、「体を大切にする」という意味を含んでいるため「お体を、お大事になさってください」は、不適切な表現となりますので注意しましょう。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ 寒い日が続きますが、くれぐれもお大事になさってください
▢ 入院されていると聞きました。ご無理なさらず、お大事になさってください
▢ 1日も早いご回復をお祈りしております。 どうぞお大事になさってください
4: お見舞い申し上げます
一時的な体調不良ではなく、病気や怪我による入院などの長期的な療養や、事故や災害に遭った人に「お見舞い申し上げます」という表現を用いて、気遣いの気持ちを伝えることができます。立場や年齢など関係なく使えます。お見舞いの気持ちを強調したい場合には、「心より」や「謹んで」を加えましょう。具体的な理由を添えて相手への気遣いを示しましょう。
使い方の例文は、下記のとおりです。
〈 例文 〉
▢ ご入院されると伺いました。謹んでお見舞い申し上げます
▢ 通勤途中の思いもかけぬご災難、心よりお見舞い申し上げます
▢ ○○○の被害を知り、謹んでお見舞い申し上げます
相手の体調を気遣う際の注意点
相手の体調を気遣うメールを送る際の注意点を解説します。言葉選びを誤ると相手に不安や不快感を与えてしまう恐れがあります。適切な言葉を選び簡潔にまとめるのがポイントです。相手を気遣うあまり、メールが長くなってしまわないよう注意しましょう。
● 忌み言葉は避ける
忌み言葉とは、不吉なことを連想させるため使用を控えたほうがよいとされている言葉のことをいいます。相手が不快にならないよう、体調を気遣うメールでは、痛み・苦しみ・終わり・消滅などを連想させる言葉や、繰り返すことや長引くことを連想させる言葉、「四」や「九」という数字は使わないようにしましょう。
▢ 苦痛を連想させる言葉: 痛い / 苦しい / 悲しい / 辛い / 病む など
▢ 終わりを連想させる言葉: 終わる / 滅びる / 消える / 絶える / 壊れる など
▢ 繰り返すことや長引くことを連想させる言葉: たびたび / 次々 / 続く / 長い / 再度 / またまた / 繰り返す / 重なる / 重ねて / 重ね重ね / しばしば / いよいよ / いろいろ / 返す返す など
● プレッシャーを与える言葉は避ける
体調を気遣うメールを送る際は、相手にプレッシャーがかかる言葉は避けるようにしましょう。具体的な症状や病名を尋ねたり、「頑張ってください」や「1日も早く」、「お待ちしています」など復帰を急かしたりするフレーズは避け、相手が療養や治療に専念できるようにしましょう。
返信を急がないメールや、返信が不要なメールの場合は「返信不要です」や「ご返信はお気遣いなく」、「ご返信には及びません」や「ご返信は急ぎません」などの言葉をメールに添えることで、相手に負担をかけずに済むでしょう。
療養や治療に専念してもらえるように「どうぞ治療に専念されて、順調にご回復されますようお祈りいたします」など配慮の言葉もあるとよいでしょう。悪気がなくても復帰を急がせていると受け取られてしまうことがありますので、相手の立場になって思いやりのある言葉選びをしましょう。
相手の体調を気遣うメールの言葉の選び方・注意点について解説しました。体調を気遣うメールは、OKの言葉遣いとNGの言葉遣いがあります。相手に寄り添った表現にすることを意識して、良好な関係を築いていきましょう。